新郎の父 2 不安

 『結婚式への参列が肉体的に可能なのだろうか?病院から聞いている話とまるで違う。酸素を吸い、中心静脈栄養で栄養をとり、肺炎に対して抗生剤の点滴、麻薬で痛みを管理し、尿の管を入れている人を結婚式に参列させることができるのか?』と私は悩みました。
 病院は日本でも屈指の大病院。しかし退院のスケジュールもまるで決まっていない。悠長に構えていたら、病院で悪化して退院自体ができない。そうなれば結婚式に出席できるはずがないわけです。Cさんの奥様は旦那さんの状態がある程度は悪いのは分かっているようでしたが、具体的な話は教えていただけていなかったので、参列することがとても厳しいことと想定されていませんでした。状態が厳しいCさんご本人が結婚式に参列するという難題に加え、ご家族のイメージが現状と異なることに私は不安を感じました。
 

 まずは病院に再度連絡をとりました。退院のスケジュールを速やかに決めてほしいと頼みました。残念なことに主治医が出張で1週間近く病院に出勤しないと告げらてました。電話で対応してくださった大病院の看護師さんと相談員さんにお願いし、主治医の先生に連絡をとっていただくようにお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。
 きっとCさんのご家族はさぞ不思議だったと思います。『なぜこの医者はこんなにも焦っているのだろうか?』と。そんな視線で見られていたのは私も知っていたのですが、仕方がなかったのです。なぜならお会いしたこともない患者さんについて病院からの情報だけを頼りに『旦那さんには、残された時間は短いのです』とも言えませんでしたし、かと言って早々に自宅に戻さなければ、退院自体が不可能になる未来が恐らく待っていたからです。

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