新郎の父 11 眠り

 次の課題は、『残りの2日間をいかにして安全に過ごすか』でした。ひとまずミダゾラムの投与をこれまでの経皮ではなくCVからの投与にして効果を一定にしました。やや深めに眠ってもらい、とにかく安全に時間が過ぎるのを待つことにしました。しかしこの方針は別の問題が生まれます。それは『いつまで深く寝てもらうか』です。覚醒させずに式までいくのか、前日からはミダゾラムの投与量を減らすのか。ご家族と相談した結果、ほぼ眠った状態で当日を迎えることにしました。そこからの2日間は薄氷を踏む思いですごしました。
 次に『眠った状態のCさんをどうやって式場に連れていくか』が問題になりました。ケアマネージャーから聞いていた話では、介護タクシーが自宅に迎えにきて、式場に送り届けてくれた後に、日中は式場を離れ夕方になって式場に戻ってきて自宅に送迎するというものでした。しかしこれでは、日中にCさんの身に大問題が発生した際に、式場で最期を迎えることを前提としなければなりません。
 私たちのクリニックでできることを考えました。私たちが考えたのは、送迎車を自前で準備することでした。そのため、普段使っている軽自動車(マツダ・スクラム)の後部座席を平らにして担架ごとCさんを収容できるように整備しました。収容するために担架も新規購入してみました。人工呼吸器・酸素濃縮器・吸引器を車内で使えるように、スクラムにエンジンから直接の継いだセカンドバッテリーを配備しました。
 結果的には介護タクシーさんが日中も式場の駐車場で待機してくださることになりました。ですから新品の担架は使わずにクリニックにしまうことになりました。乗り心地からすれば、介護タクシーが準備出来て良かったと思います。

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