新郎の父 4 お酒

 『これは本気だぞ』とCさんのお気持ちが私達に強く伝わりました。実際には体を起こしていることも辛いはずなのに結婚式への意思は明確でした。『結婚式に出席したい』という強い思いがCさんを生かさせていると感じました。

 退院日以降も抗生剤は継続しました。これにより血液のデータは改善していきました。また各種吸入薬剤を使ったのですが、痰が出しやすくなって助かりました。
 痛みは和らいだものの不眠が続いていましたね。これに対してエイミーをもう一台追加してミダゾラムとアタラックスPの皮下注を併用しました。だいぶ眠れるようになり良かったです。
 あと、退院時に留置されていたオシッコの管は早々に外せてスッキリしましたね。

 ご家族は退院前には丸山ワクチンを希望されていましたので、当院からワクチン事務局に連絡を取り物品の準備を行いました。しかし退院後のCさんは著しい倦怠感があり、首のむくみも強かったので丸山ワクチンをひとまず延期してステロイド(デカドロン)の静注を行いました。これが功を奏したのか、数日間は活気を取り戻し、訪問リハビリのリハビリ療法士さんと共にバージンロードを歩く練習を精力的にされていました。
 
 ある時Cさんは『口から飲めるようになりたいね』と仰っていました。入院先の病院からは『誤嚥を起こすから飲食は決してしてはいけない』と言われていました。しかしご自宅に戻ってきてから唾液を自然に飲み込んでいる姿を私はみていたものですから、今後の練習次第では飲めるようになるのではと思いました。喉頭鏡を用いて嚥下の評価をしてみたところ、とても上手に水分を嚥下することが出来ていました。ですから『結婚式でお酒飲めるかもしれませんね』と私が言ったらCさんは喜んでいました。

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