コロナ禍不搬送事例
あかねクリニックでは、在宅療養が必要な方々を対象に、定期診療に加えて「緊急往診」も行っています。特にコロナ禍では、急な体調悪化に対応する機会が急増しました。今回ご紹介するのは、あるご家庭への緊急対応で、医療と行政の支援体制の限界に直面した実例です。
Googleの口コミにご記載いただいた原文が以下になります。
2年前に私がコロナに掛かってしまいその時に先生にお世話になりました。その時のお話をさせていただきます。その時は高熱で動けず緊急時に来てくれた方の対応にちょっと違和感を感じました。高熱の方に色々質問をしてきて答えるのもしんどく様子を見ましょうとなりその方は帰っていきました。次の日には体調が悪化してしまいもう一度先生に来ていただき危ない状態となり、保健所や緊急時に来る方に連絡してくださったみたいです。私はその時のことが体調悪すぎてあまり覚えてないのですが病院に運ばれるまでに時間掛かったみたいです。
子供達も私の姿みてものすごく不安と心配になったみたいです。
先生が色々対応してくださったおかげで本当に助かりました。感謝しかありません。
これに関して、以下に詳細な記録を残したいと思います。目的は、社会に対して問題提起を行うためです。
ある日、妊娠中の女性Aさんから当院へご連絡をいただきました。姉のBさんが高熱と嘔吐で動けず、子ども2人だけでは対応できない状態とのことでした。Aさんはご自身が妊娠中で現地に行くことができず、公的機関に相談したところ、あかねクリニックを紹介されたとのことでした。
医師NがBさん宅を訪問すると、室内は暗く布団が散らばり、Bさんは床に横たわり反応が乏しい状態でした。お子さんたちも咳をしており、家庭全体で明らかに支援が必要な様子でした。医師はすぐに救急搬送を要請し、簡易のコロナ抗原検査ではBさんは陽性でした。
救急隊が到着し医師はその場を離れました。後で知った事ですが、Bさんはいったん救急車に収容されましたが、搬送先として救急隊が連絡したEクリニックが受け入れを拒否しました。「治療は限定的であり、交通手段がなく、またお子さんを置いて搬送するのは現実的でない」といった理由が挙げられ、搬送は中止となったそうです。
心配になって医師が再訪して状況を確認すると、Bさんは再び同じ場所に倒れており、「搬送は断られた。妹が薬を取りに行っている」と本人が話していました。
医師がAさんに連絡を取ると、「Eクリニックからは、誰かが取りに来れば薬を渡すと言われたため、自分が向かっている」とのことでした。
この経過を医師が公的機関に報告したところ、「医療機関が受け入れないと判断した以上、介入は難しい」との回答がありました。
翌日、医師が再びBさん宅を訪問したところ、容態はさらに悪化しており、脱水と頻脈が認められました。医師は再び公的機関に支援を要請しました。しばらくして現地に来た職員は、「自分は何の情報も聞いておらず、酸素飽和度の数値だけを確認するように指示されている」と述べました。お子さんにモニターを渡し、値の報告を受けると、そのまま帰っていきました。
医師は改めて公的機関に連絡し、Bさんの命に関わる状況であること、子どもたちの支援も含めて緊急対応が必要であることを強く訴えました。しかし「酸素の数値が保たれていれば問題ない。私たちは医療を提供する立場ではない」との返答が繰り返されました。
そこで医師は「このまま事態が悪化し、命に関わる結果が生じた場合、公的機関がその責任を果たさなかったと受け取られますが、その認識でよろしいでしょうか」と問いかけました。すると態度が変わり、「こちらで救急要請を行います」との返答があり、再度の搬送が実施されました。Bさんは搬送され、ようやく必要な医療を受けることができました。
医師は残されたお子さんたちについても検査を行い、2人とも新型コロナウイルス陽性であることが判明しました。咳の症状もあり、自宅でのケアをどう行うかが課題となりました。医師がAさん宅を訪問したところ、Aさんご本人もコロナ陽性であることが確認されましたが、症状は比較的安定しており、短期間ながらお子さんたちを見守ってもらえる体制が整いました。
その後、Bさんは熊谷市内の医療機関で治療を受け、約1か月後、無事に退院されたとの報告を受けました。