新郎の父 18 満足

看護師Gさんの言う通りでした。もうCさんの呼吸は呼吸機で動いているだけでした。寝入っているからとか、そんな状態ではありませんでした。他の患者さんの最期に観察される下顎呼吸になっていました。瞳孔も散大していました。かろうじて脈は触れることができました。
 新郎はCさんのお宅から遠方であり、他のお子さん達と奥様に向けて私は言いました。
『ご主人様はもう十分頑張りました。思い残すこともなく、満足したのだと思います。この分では明日の朝を迎えるのは難しいでしょう。これ以上無理をさせるのは宜しくないと私は思います。ですから、NIPPVのマスクを外してあげたいと思うのですがいかがでしょうか?』
すると、皆さんは『新郎が今こっちに向かっています。彼が到着してから外してもらうわけにはいかないでしょうか?』とおっしゃったので、ひとまずそのままにして私は自宅に戻りました。
 午前4時ごろに新郎が到着したとご家族から連絡がありましたので、再度訪問しました。そしてマスクを外しました。ご家族様だけの大事な時間のような気がしたので、私は再度自宅に帰りました。
 午前6時ごろに再度ご連絡をいただきました。『呼吸が止まりました』と。
 そして再度訪問し、死亡診断をいたしました。

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