新郎の父 6 一致

今回ご結婚される新郎は、川越からやや遠方に住んでいらっしゃいました。ですからCさんの主介護者は奥様でした。元来からCさんは奥様との二人暮らし。ありがたいことに新郎以外のお子様達のお住まいがCさんのご自宅から近いため、毎日入れ替わり立ち代わりで奥様と一緒に介護をしてくださいました。

 ご自宅に戻ってきて1週間ほど経った日でしょうか。昼間にリハビリを一生懸命されたこともあってか、首の傷からの出血が延々と続いた時がありました。ハイドロサイト越しに圧迫しましたが吸収もしきれず止血もされませんでした。創部が脆弱だったのでアドナ原末を使いました。すると魔法のように出血がとまりました。
 この出来事が介護されているご家族に『いつまで押さえても血が止まらない』という恐怖を強く植え付けることになりました。 

 不安が強くなっていったのはご家族だけではありませんでした。Cさんご自身も不安が強くなっていきました。終日、2時間眠っては30分覚醒するを繰り返していました。目が覚めてはミダゾラムのレスキューを繰り返す日々が続きました。かといって、深く眠りすぎて呼吸が抑制されることも私は怖かったので、ある程度までの鎮静にとどめていたのも事実でした。

 この時期から奥様とお子さん達のCさんへのイメージが変化していったように思えます。奥様達の不安・疲労と介護することへの覚悟が明確になったように私には感じました。その頃から、私とご家族のCさんの病状へのイメージは一致して行ったように思えました。
 

 

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