発熱患者さんへの訪問診療と8波開始して1か月の感想
寒い日が続きますが皆様体調はいかがでしょうか?
第8波になってから、約150軒の発熱患者さんを診察しました。
まず初めに当院が訪問したケースをいくつかご紹介し、それらを分類します。
その後に、8波スタート1か月時点の感想を書きました。
【分類】
【小さなお子さんがいるご家庭】
このケースは2つに分かれます。お子さんと親御さんのどちらが先に発症するかで状況が変わります。
1)ご両親が先に発症。その数日後にお子さんが発熱したとき。
ご両親も体調が崩れており、お子さんを医療機関に連れて行ってあげられない場合です。
2)お子さんが先に発症。
ご両親がお子さんを介抱している間に、ご自分達も発熱してしまう。
病気のお子さんを連れてご両親が医療機関を受診するのは非常に過酷な状況になります。
(解釈)これらは『核家族だから子供をみる人手がない』という理由だけではありません。
祖父母に感染している孫をみてもらうことで高齢の祖父母がコロナ感染することを恐れていらっしゃるからだと思います。
【交通手段がない】
1)高齢で身寄りがない。
運転免許は返納した。
感染が疑われれば公共交通機関は
使えないし、タクシー会社も拒否。
発熱しているのに歩いて受診はできない。
2)生活保護で車がない。
タクシーも利用できない。
【不搬送】
前提知識:感染していることが判明したのちに、ご自宅での療養がためらわれる例として『呼吸状態が悪い』『水分を摂れない』時が挙げられます。
具体例:高齢独居。酸素の取り込みをSpO2モニターで計測したところ異常値を示していた。食事も水分摂取も2日間できていない。
ケアマネージャーから依頼を受け、あかねが訪問。入院適応と判断したが『病床が見つからない』と県からの返答あり。自宅で酸素投与と点滴を2日間行った。3日目に入院先が決定したため搬送となった。
※12月中旬時点;酸素会社さんいわく『酸素濃縮器の在庫切れ』だそうです。『コロナ患者さんの増加が著しいから』だそうです。
(解釈)入院適応と判断しても、速やかに入院させてもらえることは珍しいです。
ご自宅での酸素投与が必要になるケースが増えています。しかしレンタルの酸素濃縮器が枯渇しているようです。
このため、当院では酸素濃縮器を購入しました。40万円もしました・・・。とほほ
【基礎疾患があるが、かかりつけが発熱外来をしていない】
元来の基礎疾患があり寝たきりである。発熱したので、かかりつけに連絡したが発熱を理由に診察は出来ないと。基礎疾患を理由に他の医療機関からも断られた。
(解釈)あかねが全てを解決できるわけではありません。しかし少なくとも現状の確認に行きます。自分達だけでは厳しい場合には県に入院調整を依頼します。それでも不搬送になったときは、搬送が決まるまで頻繁に訪問しています。
【認知症】
移動自体が非常に困難。
安静にすることが出来ない。
検査を受けに行くことを本人が拒む。
【乳幼児】
乳幼児であることを理由に受診できない例が非常に多い。
【8波スタート1か月時点の感想】
当院が介入した患者さんは大きく分けて2つに分けられます。ひとつは、ご自宅で診察・検査・処方が必要であった場合です。患者さんの移動自体が難しい場合がこれに当たります。
もう一つは、発熱外来難民の方です。何らかの理由で、医療機関から診察を断られた方たちです。
数字だけをみれば、重症化する方は一部です。診察しなくても、処方しなくても重症化しないのでしょう。しかし、2020年にコロナ感染症が我々の脅威となってから、日々それへの不安に蝕まれているわけです。
そのような中で、【もしかすると重症化するのは自分かもしれない。もしかすると自分の子供かもしれない。】と考えてしまうのは当然だと思います。
このような不安に晒され、医療機関からも診察を断られた市民は、どのような気持ちでその後の生活を送るのでしょうか?
8波開始当初(11月中旬)は、『重症予備軍の患者さんを中心に診察しよう』と考えていました。しかし、1か月が経過し、少し考えが変わりました。
生き死にだけを考えて診察依頼を受けるべきではないと感じています。そして現在は、
市民の不安とどのように向き合うべきか試行錯誤しております。